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コンテンツマーケティング基礎

AI生成コンテンツが溢れる今、「社内専門家インタビュー」をコンテンツ資産に変える5ステップ

「記事を量産できるようになったのに、なぜか問い合わせが増えない」——そう感じているBtoBマーケターは、いま増えています。AIツールの普及によって記事制作のコストは下がりました。しかしその結果、ウェブには「それっぽいが浅い」記事が溢れ、読者は疑似情報に疲弊しています。

差別化の軸は、すでに「量」から「誰が言ったか」に移っています。社内にある専門知識と現場経験——これこそが、AIには絶対に出せないコンテンツの源泉です。

この記事でわかること:

  • なぜ今「社内専門家の声」がコンテンツ差別化になるのか
  • 社内インタビューが進まない本当の原因と対処法
  • 専門家の知見を月2本のペースでコンテンツ化する5ステップ

なぜ今「社内専門家の声」がコンテンツ差別化になるのか

2024年3月、Googleはコアアップデートとヘルプフル・コンテンツアップデートを同時に展開し、「人のために書かれていないコンテンツ」への評価を大幅に引き下げました。検索品質評価ガイドラインが重視するE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)のうち、最初の「E(Experience)」——つまり実体験に基づく記述——が、これまで以上に重要な評価軸になっています。

AIが生成する記事は、インターネット上の既存情報を再構成したものです。どれだけ流暢に見えても、「御社の営業が商談で繰り返し受ける質問」「製造現場で昨年発生した品質課題とその解決策」は書けません。社内の専門家が持つ固有の知見は、構造的にAIが模倣できない一次情報です。

Content Marketing Instituteの「B2B Content Marketing Benchmarks 2025」でも、トップパフォーマーの企業の多くが「社内の専門知識とオリジナルリサーチを活用した記事」を優先していると報告しています。読者もすでに変わっています。「どのツールか」ではなく「誰が書いたか」「どんな経験に基づくか」を確認してから記事を読む習慣が、BtoBの読者層で広がっています。

裏を返せば、御社の専門家が持つ知見は、今この瞬間も競合との差別化になり得るコンテンツ資産です。問題は「その知見をどうやって記事にするか」の仕組みが整っていないことです。

社内インタビューが進まない3つの壁

多くのBtoB企業で「社内の専門家に記事を書いてもらいたいが、なかなか進まない」という状況が続いています。理由は大きく3つです。

1. 専門家の時間確保が難しい
エンジニア、コンサルタント、営業トップ——彼らは会社の中で最も忙しい人たちです。「記事を書いてください」という依頼は、本業の割り込み作業として優先度が下がります。インタビュー形式にすれば話すだけでよいはずですが、それでも「30分のアポをどう取るか」という問題は残ります。

2. インタビュアーが何を聞けばよいかわからない
マーケターは専門家ではありません。「専門用語がわからないので深掘りできない」「聞くべきポイントを外してしまい、浅い内容しか引き出せなかった」という経験を持つ担当者は多いはずです。質問設計ができないと、インタビュー自体の品質が下がります。

3. 文字起こし→記事化の工数が大きすぎる
1時間のインタビューを録音すると、文字起こしだけで膨大な時間がかかります。さらにそこから記事の構成に落とし込む作業は、専門知識と編集スキルの両方を必要とします。「とてもじゃないが、月に何本もできない」と諦めているチームが多いのはこのためです。

これらの壁は、仕組みで乗り越えられます。以降で解説する5ステップは、この3つの障壁を順番に崩すように設計しています。

専門家インタビューをコンテンツ化する5ステップ

Step 1. 「どの知見をコンテンツにするか」を記事スコアから逆算する

最初の問いは「誰に何を聞くか」ではなく「どの記事をインタビューで強化するか」です。

御社のオウンドメディアに、専門性スコアや検索評価が低い記事はありませんか。「情報はまとめられているが、実体験・数字・判断基準が薄い記事」がターゲットです。既存記事を起点にすれば、テーマ選定で迷いません。新規記事を一から作るより、「弱い記事をインタビューで補強する」ほうが改善インパクトも測定しやすい。

インタビューのテーマが決まったら、その記事が狙うキーワードと読者の疑問を整理します。「この記事を読む人が本当に知りたいことは何か」——これがインタビューの設計図になります。

Step 2. 30分で終わる構造化インタビュー設計(聞く順番が肝)

専門家に「長時間拘束します」と伝えてはいけません。「30分で終わります」と言い切ることが、アポ取得の成功率を上げます。

30分インタビューのタイムラインは以下が目安です。

時間 内容
0〜5分 背景確認(今日のテーマを1分で共有、専門家の立場・関与を確認)
5〜20分 コア質問3問(主張・理由・事例の順で深掘り)
20〜28分 補足質問2問(数字・判断基準・よくある誤解)
28〜30分 確認(「この内容で記事を書きます」と要旨を口頭で確認)

事前に質問票を送っておくことで、専門家は「考えてから話せる」ので密度が上がります。録音への同意は必ず取得してください。

Step 3. 引き出しにくい専門知識を引き出す質問フレーム

「この分野で重要なことは何ですか?」という漠然とした質問では、教科書的な答えしか返ってきません。専門家固有の知見を引き出すには、質問フレームが必要です。

実務で使えるのは以下の3パターンです。

  • 体験を問う: 「実際にそれで困った事例を1つ教えてもらえますか」
  • 判断基準を問う: 「〇〇と△△の場合、どちらを優先しますか。その基準は」
  • 誤解を問う: 「この領域でよくある誤解や、御社が最初に間違えたことはありますか」

特に「誤解を問う」フレームは強力です。専門家が「多くの人が誤解していること」を話すとき、そこには固有の経験と観察が詰まっています。読者にとっても価値が高く、検索で引用されやすい内容になります。

Step 4. インタビュー内容を記事構造にマッピングする

録音・文字起こしが完成したら、記事構造への変換作業です。全文を記事にする必要はありません。「使える発言」を抜き出し、記事のH2構成に対応させます。

具体的には、文字起こしを読みながら各発言に「H2-1に使う」「Step 3に使う」「使わない」のラベルを付けていきます。AIツールを使えばこの仕分け作業は効率化できます。ただし、使うべき発言の判断(どの言葉が読者に刺さるか)は、マーケターが行う必要があります。

発言をそのまま引用するのではなく、「専門家が言ったことをマーケターが読者向けに翻訳する」のが記事化の本質です。専門家の言葉は素材であり、記事は読者のために編集された作品です。

Step 5. 専門家チェックを最小化する「先読みレビュー」設計

記事初稿ができたら専門家に確認してもらいますが、「全体を読んでフィードバックください」では相手の負担が大きく、レビューが遅れます。

「先読みレビュー」設計とは、専門家が確認すべき箇所だけをピンポイントで示すことです。具体的には、「以下の3点のみご確認ください」と前置きしたうえで、事実確認が必要な数字・固有名詞・判断基準の記述だけを太字またはコメントで明示します。

この設計により、専門家のレビュー時間は「全体を読む1時間」から「3点を確認する10分」に短縮されます。専門家は確認作業のハードルが下がり、マーケターはレビューの返戻を早く受けられます。

月2本を社内1人で回す実際の運用パターン

5ステップが設計として整ったとして、実際にどう回すかが重要です。月2本のペースを1人で維持するための仕込み方を共有します。

テーマ候補の仕込みは月初に一括で行います。専門性スコアが低い既存記事、問い合わせで繰り返し聞かれる質問、営業が商談でよく使うトーキングポイント——この3つから候補を5〜6本ピックアップしておきます。候補があれば、インタビュー調整もテーマ選定も迷いません。

インタビューのアポ取りは「ついでに話す」文化をつくることで楽になります。社内の1on1・朝会・商談振り返りなど、既存の会議体の最後5〜10分を使わせてもらう形式が定着すると、アポ取りのコストがほぼゼロになります。専門家にとっても「記事になる」という実績が積み上がると、協力してもらいやすくなります。

工数の目安は以下のとおりです。

作業 目安時間
テーマ設計・質問票作成 1〜2時間
インタビュー実施 30分
文字起こし(AI活用) 30分
記事執筆(初稿) 2〜3時間
専門家レビュー待ち・修正 1時間
合計 約5〜7時間

月2本であれば、週2〜3時間の確保で回せる計算です。

AIツールをどこに使い、どこに使わないか

AIを「記事を書くもの」として使うと、均質な記事になります。「記事制作の工数を削るもの」として使うと、専門家の知見を際立たせる余力が生まれます。

AIに任せてよい部分:構成案の生成、文字起こし、リード文の初稿、見出し候補の列挙、誤字脱字のチェック。これらは繰り返し作業であり、AIが得意な領域です。

人が担う部分:専門家の発言のどこを使うかの判断、読者にとっての価値付け、事例・数字・判断基準の正確性確認、記事全体のトーン調整。これらは文脈と読者理解が必要な作業です。AIに渡すと、汎用的な言い回しに平均化されます。

実際の運用では、「文字起こし→仕分けラベル付け→構成案」をAIで一気に処理し、「発言の選定→記事執筆→リード文の磨き」を人が担う分業が機能しやすいです。

まとめ

  • AI生成コンテンツの均質化が進む中、「誰が言ったか」「実体験に基づくか」が差別化の軸になっている
  • 社内インタビューが進まない原因は、時間・質問設計・記事化工数の3つ。仕組みで解決できる
  • 5ステップ(逆算テーマ設計→構造化インタビュー→引き出し質問→記事マッピング→先読みレビュー)で、月2本を1人で回せる体制がつくれる
  • AIは工数削減に使い、専門家固有の知見の判断・編集は人が担う

御社の社内には、まだコンテンツになっていない知見が眠っています。今週、一人の専門家に「30分だけ話を聞かせてほしい」と声をかけてみてください。そこから始まる記事が、AIには絶対に書けない御社だけの資産になります。

オウンドマーケティングの成果を、ROIで語れるように。

コンテンツ・ファン・コミュニティマーケティングを、インテントデータと独自の分析軸で定量評価し、戦略から改善まで伴走します。
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新居 祐介

新居 祐介 Yusuke Arai

opus合同会社 代表社員

博報堂アイ・スタジオで大手ナショナルクライアントのWebサイト制作をプロデュースし、その後サイバーエージェントにてAmebaブログを始めとするAmeba関連サービスの立ち上げに参画、開発プロジェクトをリード。2006年に独立しWebサイト開発事業や自社メディア事業を主とする会社を設立・経営するも、8期目にトラブルで廃業。その後アマナで執行役員及びアマナイメージズ社長就任。2024年9月にopus合同会社を設立。

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