デジタル広告・マーケティングの世界は、AI Overviews(AIO)の登場をはじめとする生成AIの普及により、大きな転換期を迎えています。従来のリスティング広告やSEOの手法だけでは成果を出しにくくなり、AIを前提とした新しいマーケティングの基礎知識が求められています。

本記事では、デジタル広告・マーケティングの基本用語から、2025年のトレンドであるAIO対策、Cookieレス時代のデータ戦略までを体系的に解説します。

デジタル広告の基本指標

デジタル広告の効果を正しく評価するためには、基本的な指標を理解することが不可欠です。ここでは、日常的に使用する8つの指標を整理します。

Impression(インプレッション)

広告がユーザーの画面に表示された回数です。広告の到達範囲を示す基本指標であり、認知施策の効果測定に用います。ただし、表示されただけでは効果があったとは言えないため、他の指標と組み合わせて評価します。

Click(クリック)

広告がクリックされた回数です。ユーザーが広告に興味を持ち、行動を起こしたことを示します。クリックの質(その後のコンバージョンにつながったか)も合わせて評価することが重要です。

CV(コンバージョン)

広告経由でユーザーが目標とするアクション(購入、問い合わせ、資料請求など)を完了した件数です。広告の最終的な成果を測る最重要指標のひとつです。

CTR(クリック率)

表示回数に対するクリック数の割合です(クリック数 ÷ 表示回数 × 100)。広告クリエイティブの訴求力やターゲティングの精度を評価する指標として使われます。業界や広告形式によって平均値が異なります。

CVR(コンバージョン率)

クリック数に対するコンバージョン数の割合です(CV数 ÷ クリック数 × 100)。ランディングページの効果やユーザー体験の質を測る指標です。CTRが高くてもCVRが低い場合は、広告とLPの整合性を見直す必要があります。

CPC(クリック単価)

1クリックあたりの広告費用です(広告費 ÷ クリック数)。広告運用の費用効率を評価する基本指標であり、入札戦略やキーワード選定の判断材料となります。

CPA(顧客獲得単価)

1コンバージョンを獲得するためにかかった広告費用です(広告費 ÷ CV数)。ビジネスの収益性と直結する指標であり、LTV(顧客生涯価値)との比較で投資判断を行います。

ROAS(広告費用対効果)

Return on Ad Spendの略。広告投資に対してどれだけの売上が得られたかを示す指標です(売上 ÷ 広告費 × 100)。ECサイトなど直接売上が計測できるビジネスで特に重要です。ROAS 300%なら、広告費1円あたり3円の売上を意味します。

広告メディアの種類と特徴

SEM(検索エンジンマーケティング)

検索エンジン上で行うマーケティング施策の総称です。リスティング広告(検索連動型広告)とSEO(自然検索最適化)の両方を含みます。ユーザーの検索意図に合わせた広告配信が可能で、顕在層へのアプローチに強みがあります。

2025年の変化:AI Overviewsの表示により、検索結果の上部をAI生成の回答が占めるケースが増加。リスティング広告の表示位置やCTRに影響を与えており、キーワード戦略の見直しが必要です。

ディスプレイ広告

Webサイトやアプリ上にバナーや動画形式で表示される広告です。GDN(Googleディスプレイネットワーク)やYDA(Yahoo!ディスプレイ広告)が主要な配信面です。認知拡大やリターゲティングに効果的です。

トレンド:AIによるクリエイティブの自動生成・最適化が進み、Google P-MAXなどの自動化キャンペーンの活用が拡大しています。

SNS広告

Instagram、X(旧Twitter)、Facebook、TikTok、LINEなどのSNSプラットフォーム上で配信される広告です。デモグラフィックや興味関心に基づく精緻なターゲティングが可能です。

  • Instagram:ビジュアル訴求、EC連携に強い。リール広告の伸びが顕著
  • X(旧Twitter):リアルタイム性、話題性の拡散に強い
  • TikTok:若年層リーチ、バイラル効果。短尺動画の制作が必須
  • LINE:日本国内のリーチ力が圧倒的。友だち追加広告やLINE公式アカウント連携

動画広告の進化

CTV広告(コネクテッドTV)

インターネットに接続されたテレビ(スマートTV、Fire TV Stick等)で配信される動画広告です。テレビの大画面での視聴体験と、デジタル広告のターゲティング・計測機能を両立できる注目の広告フォーマットです。

市場動向:日本でもTVerやABEMAなどのAVOD(広告付き無料動画配信)の成長に伴い、CTV広告市場が拡大しています。従来のテレビCMでは難しかったターゲティングと効果計測が可能になります。

縦型動画広告

TikTok、Instagram Reels、YouTube Shortsなどのショート動画プラットフォームで配信される9:16の縦型フォーマットの広告です。スマートフォンでの視聴に最適化されており、若年層を中心に高いエンゲージメントを獲得できます。

制作のポイント:冒頭3秒で注目を集める、テキストオーバーレイで音声なしでも伝わる設計、UGC風のクリエイティブが効果的です。

AIマーケティングの新常識

生成AIの広告・マーケティング活用

2025年現在、生成AIは広告・マーケティングのあらゆる工程に浸透しつつあります。

  • 広告コピー生成:ターゲット別・媒体別の広告コピーを大量生成し、ABテストの効率を向上
  • クリエイティブ制作:バナー画像やSNS用ビジュアルのドラフトをAIで生成し、デザイナーが仕上げ
  • パーソナライゼーション:顧客データに基づき、個人に最適化されたメッセージを自動生成
  • レポーティング:広告運用データの分析と改善提案をAIが自動化

AI Overviews(AIO)の影響と対策

GoogleのAI Overviewsは、検索クエリに対してAIが生成した回答を検索結果の上部に表示する機能です。これにより、ユーザーが検索結果のリンクをクリックせずに情報を得る「ゼロクリック検索」が増加しています。

マーケティングへの影響:

  • 自然検索のCTRが低下する可能性がある
  • AI Overviewsに引用されるコンテンツの重要性が高まる
  • 単純な情報提供型コンテンツの価値が相対的に低下する
  • 独自の知見・データ・体験を含むコンテンツの価値が向上する

対策(LLMO):

  • 構造化データ(Schema Markup)の実装でAIの理解を助ける
  • FAQ形式のコンテンツで引用されやすい構造を作る
  • E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を強化する
  • 独自データや一次情報を含むコンテンツを制作する

Cookieレス時代のデータ戦略

サードパーティCookieの廃止・制限の流れは不可逆であり、マーケティングにおけるデータ収集・活用の方法が大きく変わっています。

ファーストパーティデータの強化

自社で直接収集したデータ(会員情報、購買履歴、サイト行動データ等)の重要性が急速に高まっています。CRM、MA(マーケティングオートメーション)、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の構築・連携が鍵となります。

コンテキストターゲティングの復権

Cookie に依存せず、ユーザーが閲覧しているコンテンツの内容に基づいて広告を配信する手法が再評価されています。AIの自然言語処理技術により、コンテキスト理解の精度が大幅に向上しています。

プライバシーサンドボックス

Googleが提唱する、プライバシーを保護しながら広告の効果測定やターゲティングを可能にする技術群です。Topics API(興味関心ベースの広告配信)やAttribution Reporting API(コンバージョン計測)などが含まれます。

まとめ

2025年のデジタル広告・マーケティングは、AI Overviewsの普及、生成AIの実用化、Cookieレス時代の到来という3つの大きな変化の渦中にあります。基本的な広告指標の理解を土台としつつ、AIを前提とした新しいマーケティング手法への適応が求められています。

重要なのは、テクノロジーの変化に振り回されるのではなく、「顧客にとっての価値」を起点に考えるという原則は変わらないということです。AIは手段であり、マーケティングの本質は「顧客の課題を解決し、価値を届ける」ことにあります。

opusでは、最新のAI技術とマーケティングの知見を融合し、企業のデジタルマーケティングを支援しています。


著者

新居 祐介 / Yusuke Arai (opus合同会社 代表社員)

博報堂アイ・スタジオで大手ナショナルクライアントのWebサイト制作をプロデュースし、その後サイバーエージェントにてAmebaブログを始めとするAmeba関連サービスの立ち上げに参画、開発プロジェクトをリード。2006年に独立しWebサイト開発事業や自社メディア事業を主とする会社を設立・経営するも、8期目にトラブルで廃業。その後アマナで執行役員及びアマナイメージズ社長就任。2024年9月にopus合同会社を設立。

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