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メディア戦略・設計 更新: 2026.09.10

シグナルベースドセリングとは?買う気配を起点にする営業

シグナルベースドセリングとは?−−"買う気配"を起点に動く営業・マーケの新常識

シグナルベースドセリング(Signal-Based Selling)とは、ひとことで言えば「見込み客が漏らす”買う気配”を起点に、動くタイミングと相手を決める」手法です。

従来の営業は「リストを上から当たる」「フォーム経由のリードを待つ」のが基本でした。これに対しシグナルベースドセリングは、相手の行動が発する購買シグナルを捉え、温度が高い相手に・高いタイミングで動く——順番を逆にします。

この記事では、シグナルの正体と捉え方、そしてなぜ自社(1stパーティ)のシグナルが効くのかを整理します。

この記事でわかること:

  • シグナルベースドセリングが従来手法と何が違うのか
  • 捉えるべき購買シグナルの具体例
  • なぜ「自社サイト上のシグナル」が最も確度が高いのか

なぜシグナルベースドセリングへの移行が進むのか

理由はシンプルで、「リードの数」では商談の質を説明できなくなったからです。

接点150件に対し購買意図のあるシグナルは3件という対比図。フォーム送信や名刺交換は接点ができた事実を示すだけで、いま買う気があるかは教えてくれない

フォーム送信や名刺は「接点ができた」ことを示すだけで、「いま買う気があるか」は教えてくれません。一方、購買シグナル——たとえば導入事例ページを何度も見る、料金表に戻ってくる、特定機能の記事を読み込む——は、本人が宣言しなくても検討が進んでいる事実を示します。

数を集める発想から、気配を捉える発想へ。これがシグナルベースドへの移行の核です。

背景には、BtoBの取引そのものが非対面へ移った事実があります。経済産業省の調査によれば、2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%と前年から3.1ポイント上昇しました(出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」2025年8月26日公表)。買い手は営業に会う前に、自分で調べて候補を絞り込んでいます。その調べる行為そのものが、こちらから見えるシグナルになります。

従来型アプローチとシグナルベースドセリングの比較図。従来はリストを上から当たって数を集める。シグナルベースドは相手の行動が発する買う気配を起点に、相手とタイミングを決める

どんな「購買シグナル」があるか

シグナルは大きく、自社の外で起きるものと、自社の中で起きるものに分かれます。

外部のシグナル(3rdパーティ寄り)

  • 業界メディアやレビューサイトでの比較・調査行動
  • 競合カテゴリの記事閲覧の急増
  • 採用・資金調達・組織変更など、ニーズが生まれる企業イベント

自社内のシグナル(1stパーティ)

  • 料金ページ・導入事例・比較記事への繰り返しアクセス
  • 資料ダウンロード、メール内リンクの開封・クリック
  • 特定コンテンツの深い読了(途中離脱せず最後まで読む)
購買シグナルの深さを5段階で示した図。業界関連記事を1本読む、特定機能の解説記事を最後まで読み込む、メール内リンクを開封・クリック、資料をダウンロード、料金ページや導入事例へ繰り返しアクセス、の順に検討が深まる

外部シグナルは「まだ知らない相手を発見する」のに強く、自社内シグナルは「すでに関心を持った相手の温度を測る」のに強い、という役割分担があります。

なぜ「自社サイト上のシグナル」が最も確度が高いのか

発見力では外部シグナルが優れますが、確度(精度)では自社内=1stパーティのシグナルが勝ります。

外部シグナルと自社内シグナルの対比図。外部(3rdパーティ寄り)は役割が発見でメタファーはレーダー、自社内(1stパーティ)は役割が温度測定でメタファーはサーモグラフィ

理由は、自社サイトでの行動が「カテゴリへの興味」ではなく「自社そのものへの興味」を直接示すから。料金ページに3回戻ってくる相手は、業界記事を1本読んだだけの相手より、明らかに検討が進んでいます。しかも自社データなので、ブラウザのCookie規制や外部データの劣化に左右されにくく、リアルタイムで取れます(背景は関連記事「1st-partyデータと3rd-partyの違い」もあわせてご覧ください)。

外部シグナルはカテゴリへの興味、内部シグナルは自社そのものへの興味を示すという対比図。自社が直接取得する1st-partyデータはCookie規制や外部データの劣化に左右されにくい

つまり、外部で広く発見し、自社内で深く見極める。この二段構えが、シグナルベースドセリングを機能させます。

二段構えのシグナル戦略の図。Stage1は3rdパーティデータで市場全体の兆しを外部から広く発見し、Stage2は1stパーティデータで自社への本気度とタイミングを正確に測る

シグナルを”作る”という発想

ここで見落とされがちな点があります。自社内シグナルは、自社のコンテンツがなければ生まれないということです。

導入事例も、比較記事も、機能解説もないサイトには、見込み客が温度を上げる場所がありません。つまり質の高いオウンドコンテンツは、それ自体が「購買シグナルを発生させる装置」でもあるのです。

コンテンツが購買シグナルを発生させる装置であることを示す循環図。質の高いオウンドコンテンツを入力に、見込み客が消費して温度を上げ、読了・再訪・ダウンロードという気配が生成・計測される

購買シグナルを”買って探す”のではなく、コンテンツで”生み出し・計測する”。何を作れば購買意図が動き、その反応をどう次のコンテンツに還元するか——この全体像は、関連記事「コンテンツマーケティング3.0」で扱っています。

まず何から始めるか

ツールの導入から入る必要はありません。最初にやることは、自社サイトの中で「見に来た人の本気度が表れるページ」を決めることです。多くの場合、料金ページと導入事例ページの2つで足ります。

  • 計測の起点を決める: 料金・導入事例など、検討が進んだ人しか見ないページを2〜3枚選ぶ
  • 繰り返しを見る: 1回の閲覧ではなく、同じ人が期間内に何度戻ってきたかを数える
  • 渡す先を決めておく: 条件を満たした相手に誰がいつ連絡するかを、先に決めておく

ここまで決まっていれば、あとは計測を足すだけです。逆に、渡す先を決めないまま計測だけを始めると、シグナルは溜まるのに誰も動かないという状態になります。

あなたの会社のサイトは、見込み客が”気配”を残せる場所になっているでしょうか。

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新居 祐介 Yusuke Arai

opus合同会社 代表社員

博報堂アイ・スタジオで大手ナショナルクライアントのWebサイト制作をプロデュースし、その後サイバーエージェントにてAmebaブログを始めとするAmeba関連サービスの立ち上げに参画、開発プロジェクトをリード。2006年に独立しWebサイト開発事業や自社メディア事業を主とする会社を設立・経営するも、8期目にトラブルで廃業。その後アマナで執行役員及びアマナイメージズ社長就任。2024年9月にopus合同会社を設立。

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